日米両国の自家用操縦士免許を保持者が解説!海保機と日航機の衝突事故は、なぜ起こったか!?
先に、被災したりお亡くなりになられました方には、心よりおくやみ申し上げます。
航空機事故調査の結果が出ましたので、修正して投稿いたします。
ATCでの意思の疎通が出来てなかったようです。
「No.1が…」と、よく注目されますが、マジックワードの復唱ができてましたか?と、疑問を持つ事故です。
航空機事故について専門的な知識をなるべく排除
高度な知識のある専門家さん達のレベルまではいかないぐらいの、自家用操縦士を取得するぐらいの素人レベルで解説していこうと思います。
テレビ番組などでは、しきりと専門家さん達が登場して解説をされるのですが、今ひとつピンときません。高度な資格を取得されている「元大手航空会社の機長」であったり、「なんちゃら評論家」だったり…
日米両国の「自家用操縦士免許」を持つ、超初心者さん向けの解説をしたいと思います。
専門家さんのレベルは、「パイロットなら知っていて当たり前でしょ!」…的なレベルで、意味が分かりません…(汗)
航空無線免許の種類
航空機を飛ばすには、日本では2種類の航空通信用無線免許があり、そのどちらかが必要です。
これがないと、無線通信ができないため航空機を飛ばすことは出来ません。
航空特殊無線技士
自家用操縦士で、エンジンが1つ、「セスナ機」と呼ばれるような小型機レベルを飛ばすには、『航空特殊無線技士』の免許が必要です。
私も持っている最低限の免許です。
航空無線通信士
自家用を超えて、事業用(プロ)操縦士ともなると、『航空無線通信士』の上位資格が必要となります。パイロットで就職する際も必要とされる場合があります。
今回の事故では、管制官、大手航空会社パイロット、海上保安庁パイロットは上位資格の『航空無線通信士』を取得しています。
取得していなければなりません…ですね(笑)
事故をシミュレーションしてみる
地上滑走から離陸するまでの基本的な流れについて、架空の空港を設定し、解説していきます。
大きな空港になると、それぞれのパートごとに管制官が変わっていくので、無線の周波数を変えていく必要があります。間違えると、他の交通に支障をきたしますので、何度も周波数の数字を見てを確認します。
プッシュバック
乗客が乗り込み、搭乗ドアを閉められ、機体が後ろに押し下げられていきます。
このときは、『グランド・コントロール』または、『ランプ・コントロール』でプッシュバックの許可を得ます。
空港によっては、エンジンスタートするときも許可を得なければならない空港もありますね。
セスナ機は、プッシュバックも、エンジンスタート許可もありませんので、ご安心ください。時には例外のある空港もあるでしょう(笑)
グランド・コントロールの呼び方は空港によって様々です。
グランドもあれば、ランプ、ランプコントロールなどなど。
地上滑走
エンジンも始動して安定してきました。
離陸に向けて地上滑走(Taxi)していきます。
グランド・コントロールに地上滑走の許可を得ます。
※ここでは架空の航空会社を設定してのやり取りです。イメージとしてお考えください。
123便:Tokyo ground, Andromeda 123,Taxi to Runway 34R,Noth bound Departure,with G.
東京グランドへ、アンドロメダ航空123便です。地上滑走で滑走路34Rに向かいたい。北向きの出発方式で、インフォメーションGを受信しています。
グランド管制官:Andromeda 123, Tokyo ground,Taxi to Runway 34R,via taxiway C,taxiway C-5.
アンドロメダ航空123便へ、東京グランドです。地上滑走で滑走路34Rに向かってください。誘導路Cと誘導路C-5を通ってください。
123便:Andromeda 123,Taxi to 34R,via C,C-5.
アンドロメダ航空123便、地上滑走で滑走路34Rに向かいます。経由は誘導路Cと誘導路C-5です。
交信は簡潔に復唱(Read back)が、基本です。
簡潔でも管制官との意思疎通は出来ています。これ以上省略すると、意味をなしませんから。
滑走路手前
誘導路Cを通り、誘導路C-5手前までやってきました。いよいよ離陸していきます。
ジェット機や、ジェットエンジンを使ったプロペラ機は、すぐに飛び立つことが出来ますが、車と同じ様なピストン・エンジン(レシプロエンジン)を使う航空機は、エンジンチェックをします。エンジン回転が上がるとか、下がるとか…色々確認します。
今回の架空アンドロメダ航空会社は、ターボプロップ機(ジェットエンジンを使ったプロペラ機)のため、すぐに離陸できます。
➊ヒューマンエラー:ちょっとせっかちな機長は、地上滑走中の誘導路Cを走行中にタワー交信をしてしまいました。
123便:Tokyo tower,Andromeda 123,Taxing to 34R,On Taxiway C.
東京タワーへ、アンドロメダ123便です。滑走路34Rに向けて地上滑走中で、誘導路C上にいます。
タワー管制官:Andromeda 123,Tokyo tower,You are No.1. Taxi to holding point C-5.(Hold short of Runway34R.)
※()内は言われていたかは不明です。「停止位置C-5」との内容からの推測です。
アンドロメダ航空123便へ東京タワーです。あなたは離陸が1番目です。C-5の停止位置へ地上滑走してください。(滑走路34R手前で止まってください。)
管制官もあわて者であることを察してか、1番目の離陸を伝えてくれました。
少しでも落ち着いてもらおうと思っての心優しい管制官です。
しかし、滑走路34Rへの進入は許可されていません。
❷ヒューマンエラー:心優しさに甘えてしまったアンドロメダ航空のパイロットクルーは、誘導路C-5の先にある「滑走路内のC-5の停止位置」だと勘違いしてしまいます。
123便:Andromeda 123,No.1.Taxi to holding point C-5.(Hold short of Runway34R.)Thank you!
アンドロメダ航空123便、1番目の出発。C-5の停止位置に地上滑走します。(滑走路34R手前で止まります。)ありがとう!
1番目の出発を宣言されて、気を良くしたアンドロメダ航空のパイロット達…(笑)
管制官の指示通り、地上滑走を続けて停止位置C-5に向かいます。
Holding point C-5…
—管制官は、誘導路上のC-5停止位置を指しているのでしょうが、パイロット側から考えると、滑走路上のC-5の停止位置に捉えることもできます。
—もし、ここで正しくいうのであれば、—
You are No.1.Taxi to hoding point on Taxiway C-5.Hold short of Runway34R.
—あなたは離陸1番目です。誘導路C-5上の停止位置に地上滑走してください。滑走路34R手前では止まってください。
今回の事故は、この『Holding point』がどこなのかを両者で認識が違っていることになるのです。
滑走路侵入禁止のマジックワードです!
Hold short of
夕暮れの東京空港
空港周辺は日没となって、真っ暗です。若干、薄明かりの太陽の光がある程度…(汗)
この34Rの滑走路はCAT3(カテゴリー3)という、視程0の状態(一寸先も見えないような状態)でも着陸できる高性能な滑走路です。
青森空港のパンフレットに、青森空港のCAT3の説明がありましたので、参考にしてください。ちょっとだけ専門的な内容の部分もあります。
青森空港のパンフレットはこちら。
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kendo/airport/files/202003pampf.pdf
誘導路を含め、ライトの明かりもちょっと明るいのでした。
そこに、着陸態勢に入っていた銀河超特急航空999便が進入してくるのでした。
999便:Tokyo tower,Galaxy express 999,On final,34R.
東京タワーへ、銀河超特急航空999便です。滑走路34Rの最終コース上にいます。
着陸態勢の銀河超特急航空999便。着陸進入継続の指示を受けていたので、最終コースまでやってきていました。
目の前は滑走路です。地上での出発待ちの航空機の無線のやり取りも聞いていました。
離陸する航空機たちが、誘導路で止まるといっていると、無線通信内容から確認済みなわけです。
タワー管制官:Galaxy express 999,Tokyo tower,Cleared to land Runway34R,Wid 310 at 8.
銀河超特急航空999便へ、東京タワーです。34Rの着陸許可。風は310度から8ノット吹いてます。
着陸許可のマジックワードが出ました!!
Cleared to land
この言葉がなければ、着陸は出来ません。絶対ダメです!
テレビの解説や、公的機関の発表資料には直訳のように「支障無し」のように書いてありますけど、違和感ありです。(笑)
自家用操縦士を取得するとき、このマジックワードが出てないときに着陸しようものなら、教官とともに管制塔への呼び出しを受けます。
かなり怒られますよ…(涙)
999便:Cleared to land 34R,Galaxy express 999.
滑走路34Rへ着陸許可。銀河超特急航空999便。
マジックワードの復唱は絶対です。
欠けたりすると、何度も聞かれます。
危険が伴う時は、復唱が必ず付いてきます。
意思疎通の確認ですから、当然の基本作業です。
その時がやってくる…
真っ暗な中、滑走路34Rを示すライトが目映く光って眩しいくらい…
着陸に向けてエンジンパワーを最小限にまで下げて降下していく銀河超特急航空999便。
滑走路端の誘導路C-1で待機するエアバスA300-600R、ボーイングB737-800などの列が出来ている。
それらがコックピットから見えたのは、真横を過ぎようとするぐらいです。
銀河超特急航空のパイロットたちは、接地帯の目標に全集中し、神経を尖らせています。
接地帯の目標は、中心線の破線両側に、湿布を貼ったような大きな帯が書いてあります。
その横には、『PAPI』と呼ばれる進入角表示灯が、あります。
目標地点に着地するように接地帯、PAPIや、計器類を見ながら、意識を集中させて着陸していきます。
銀河超特急航空のパイロットたち…
操縦桿を握るのはキャプテン(機長)。
無線やチェックリストの読み上げなど、操縦のサポートをするのがコパイ(副操縦士)。
二人とも、Before Landing Check(着陸前チェックリスト)を読み上げて完了し、着陸に向けて心の中でつぶやきます。
「チェックリスト、完了。他機の進入報告無線なし。計器類の異常なし。安定飛行継続よし!」
ドンピシャ!着地!!
アンドロメダ航空のパイロットたち…
誘導路C-5で行うはずの『Before Takeoff Check』(離陸前チェックリスト) を誘導路CからC-5の走行中に行っていました。
コパイが読み上げています。
キャプテンは聞きながらチェックしていき、ステアリング操作でセンターラインをキープしています。
誘導路C-5と、滑走路34Rの境を示すHold Line(停止線)にさしかかった時、キャプテンとコパイは思うのでした。
123便機内の会話:離陸1番目。C-5停止位置確認。C-5停止!
コパイは、通常なら着陸体制の航空機がないか窓の外を見て「ファイナル クリアー!」と宣言しなければなりません。
そして、滑走路に進入する際は『マジックワード』がなければ侵入できないのです。
しかし、タワーとの交信では、C-5の停止位置まで地上滑走の許可が出ています。迷うことなく、C-5の停止位置に向かったのです。
そのため、123便クルーたちは肝心の滑走路進入する際のチェックを怠ってしまったのです。
❸ヒューマンエラー:マジックワードが無いまま滑走路に進入し、基本作業を怠ってしまう。
本来なら、滑走路上で待機する際は
Line up and wait
のマジックワードが必要です。
しかし、二人とも疑う事なく進入してしまいました。
なぜなら、C-5の停止位置は、彼らにとって滑走路内にあるからです。
そのため、滑走路内待機の指示が出ていると認識してしまい、着陸態勢で目前に迫ってくる「銀河超特急航空999便」を目視確認もしていないのです。
滑走路中心線上に着いて、なかなか離陸許可がでません。
123便機内の会話:何かトラブったか…??
…そう思った瞬間…
ドッカァ〜〜〜〜〜ン
着地した瞬間、銀河超特急航空999便と、アンドロメダ航空123便が激突…(涙)
考察してみる
無線の交信内容から考えられる各パイロットたちの行動をみていきました。
焦っていたようにも見えるアンドロメダ航空のパイロットたち。
彼らは、冷静にC-5の停止位置に向かっていただけです。
Read back(復唱)も完璧です。
なぜなら、管制官も「誘導路上のC-5停止位置」とは言ってなく、単に「C-5の停止位置」と言っています。
都合がいいかもしれませんが、滑走路進入の許可が出ていると認識されても仕方ないと考えられるのです。
チェックリスト、マニュアル
- 何のためのマニュアル?
- 何のためのチェックリスト?
事故を防ぐために、長い年月に起こった事故のデーターから生まれたモノです。
人間だから忘れる、ミスをする。
それが分かっているからマニュアルなり、チェックリスト化したはずです。
プロの無線資格、操縦士資格
プロの資格として、事業用操縦士免許、計器飛行証明、多発機限定、航空無線通信士。
特に、計器飛行に必要な複雑な無線でのやり取りは、どこに行ったのでしょうか?
必ずと言っていいほど、計器飛行にはRead back(復唱)を求められます。
私は計器飛行証明の免許は取得していませんが、訓練中に航空路に入るたびに進路や高度、速度などを聞かれ指示されました。少しでも違えば、「どこ行ってんだ!」と、無線で言われたことも…(汗)
仕舞いには「Did you copy?」(分かってるの?)…(涙)
そんな修羅場(?)を潜り抜けて資格取得しました。
長かったですけど、安全への思いの違いに触れられていい経験でした。
しかし、自家用操縦士レベルでも理解できるような無線交信のやり取りから推測すると、意思疎通がなされてないことがわかります。
プロだから分かっているだろう…
自動車事故でもよく言われる「だろう運転」。
それが今回の事故につながったことは間違いありません。
なぜなら、管制官は「誘導路上のC-5停止位置」と思って、「Taxi to holding point C-5」と伝え、滑走路前で止まるだろうと思っていました。
しかし、パイロットたちの中には、滑走路上のC-5停止位置まで進めると認識してしまいました。そもそもなんですが、「Holding point…」というのも変なんですけど。
だろう運転の排除…なんて、至るところに貼ってあります。
管制官も「プロだから、分かっているだろう…」という甘えになってしまったのかもしれません。
滑走路に進入できるマジックワード
これらのマジックワードがなければ、滑走路に進入、離着陸ができません。
ときどき、ローカルルールがありますが、基本的に次に挙げるものです。
- Cleared for takeoff:離陸許可
- Cleared to land:着陸許可
- Cross Runway:横断許可
- Line up and wait:滑走路上待機許可
このどれかがなければ、進入禁止です。
まとめ
大惨事となってしまった航空機事故について、専門的な言葉をなるべく避け、専門家のように「プロなら知ってて当たり前」的な考えを無くして解説してきました。
専門レベルになると、「知っているだろ!」と、それが当たり前となり変な先入観が生まれてしまい、本当の真実が見えてきません。
上位資格があればあるほど、顕著になるかもしれません。
そんな人たちから比べれば、「ヒヨッコが何をいうか!!」レベルのことなのですが、真実を突き止めようとすると素人レベルで探ったほうが見えてきます。
英語力に長ける人(ネイティブのアメリカ人)が「航空管制英語」を聞くと、意味が分からないと言っていました。なんでも、単語のブツ切れでわからないそうです。(汗)
さて、今回の事故はいろいろと言われていますが、無線交信、行動を単純に考えて、管制官とパイロットとの意思の疎通が出来てなかった事にあります。
事故後、パイロットの証言では「滑走路進入が許可されていたと認識している」と言っているし、管制官は「滑走路進入は指示していない」と言っています。
両者は、Holding point C-5が、どこなのかの意思疎通がなされていません。
片方は、『単なる滑走路上の停止位置C-5。』
もう一方は、『無線聞いていて当たり前なんだから、着陸機があるのを知ってるだろ!誘導路のC-5で止まっとけよ!進入許可言ってないだろ!』
こうなると、両者痛み分けですね。(汗)
いくらハード面を強化しても、認識のズレを直さない限り、今後も事故は続くと思います。
しかも、羽田空港は国内数カ所しかないCAT3の空港です。
航空無線のわからない航空機がウロチョロしていたのでは、全く見えない状態での着陸は不可能という事です。宝の持ち腐れです。
もう一度、原点に帰って航空管制を管制官、パイロット諸氏には勉強し直して欲しいものです。
また、早口がカッコイイと言うものではありません。意思疎通が目的です。アメリカのローカル空港での定期パイロットのおじいちゃん、おばあちゃんがタワーとのやりとりを聞いてると、のんびりしてます…(笑)
サンフランシスコ、LAの空港になると、マシンガンのように飛んできて、『小僧!入ってくんな!』と、強烈な圧をかけてきます。(汗)
以上、参考になれば嬉しいです。
それでは今日も1日、お元気で…
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よろしくお願いします。